TVCJ2020で審査員特別賞を受賞した有本琢磨シェフは、井上紗奈シェフとともにご夫婦で「野菜イタリア料理と自然派ワインのお店 momento(モメント)」を切り盛りしています。テイクアウト中心で運営していたお店を移転し、2021年3月からリニューアルオープン。吉祥寺駅・井の頭公園近くの好立地で、本場仕込みのイタリアンを堪能できます。「momento」の名物は野菜料理だけでなく、パスタも絶品。有本シェフはイタリア修行時代に現地のレストランで「パスタの神様」と呼ばれたほどの腕前です。
今回は有本シェフに食材へのこだわりや、料理を通じて伝えていきたいことを伺いました。
ーー日本でもイタリア野菜は広まっているのでしょうか。
埼玉や千葉でイタリア野菜を中心に育てられている農家さんがいて、イタリア野菜を扱う方も少しずつ増えています。そういう方々へ連絡は取っていますね。でも、味が日本のものになってしまうんですよ。
ーー「日本のものになる」とはどういうことでしょうか。
土や日差しの違いだと思うのですが、味が日本に適応しているといいますか……。イタリアで食べた野菜は味が「バチン」と一瞬でわかるのですが、日本で育ったイタリア野菜は繊細で、悪く言うと味がぼんやりしています。
ーー地中海の土は日本と違うのでしょうか。その影響でしょうか。
僕が最も違いを感じるのは、向こうの土は粘土質なんです。雨の日に野菜を収穫しに行くと、靴にべったりと粘土が付いてしまうほどなんですよ。
ーーイタリアで使っていた野菜で、日本でも使いたいと思うものはありますか。
ビエータですね。スイスチャードの巨大版のような野菜があって。あと最近は日本でも手に入るようになりましたけど、フェンネルです。ただ、日本でも育てている方は増えてきたんですが、香りが弱くて。イタリアだとフェンネルを運んでくる方が近づいてくるだけで「来た!」ってわかるくらい強烈なんです。
ーーそんなに差があるんですね。
そのぶん日本の野菜は、繊細な食感や歯ざわりが優れています。イタリアだと繊維質が強すぎて、煮込まないとごわごわして食べれないこともあって。
ーー「本場のイタリア野菜を使えばもっと味を出せるのに」といった葛藤はありますか。
そういうことはないですね。日本の野菜の良さを出すために工夫をしています。ただ、イタリアでやっていたことを思い出しながら「日本の野菜だったらどれが一番合うかな」とは考えます。あとは食材同士が邪魔をせず、共鳴しあうような組み合わせを目指しています。
ーーつい使いたくなる食材などはありますか。
日本でビーガンだと、キノコを使いますね。あとは旬の野菜を使うように心がけています。生で食べていいものや、茹でておいしいものなどそれぞれ個性があるので、それをどう引き出してあげるか考えています。
ーー奥さん(井上紗奈シェフ)とも料理について相談はされますか。
今は子どもが生まれて間もないので控えてますが、「この時期はイタリアではどんな感じだったっけ」「こういうのにしようと思うけど、どうかな?」といった話はしますね。
ーーご夫婦ともに「食」に対する思い入れは強いと思いますが、お子さんにはどんな「食育」をしていきたいですか。
「命をありがたく食べる」という感謝の気持ちを持ってくれれば、それでいいと思っています。僕たちもお店ではお肉も提供していますし、一番大切なことは「命を大事に食べてほしい」ということですね。
momento(モメント)
住所:〒180-0005 東京都武蔵野市御殿山 1-3-9 1F-C
電話:070-4002-5496
メール:momentoitalian@gmail.com
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