なぜパタゴニアが食品を扱うのか?
- 千葉 芽弓
- 3月1日
- 読了時間: 7分
地球の未来を考える異業種コラボトーク「パタゴニア×信濃屋」。虎ノ門ヒルズステーションタワーB1階にある、信濃屋初のコンセプトショップcask。そのショップインショップレストランWにて開催された食の探求セミナーに参加して参りました。

サスティナブル企業として誰もが認知するパタゴニア。Patagoniaはどこの国のことばでもパタゴニアと読むため、世界中で認知されるよう名付けられたそうです。

この日の講師は、サーフィンやスノーボードなどアウトドアスポーツと自然を愛し、自然農法の米作りをはじめ農業にも取り組むライフスタイルをおくるパタゴニアプロビジョンズのディレクターである近藤勝宏氏。
パタゴニアは1960年代創業で、山登りに耐久性の高い洋服を作り始め、70年代のアウトドアブームの波に乗り成長しました。そんな中で目にした高度成長期の森林伐採、そしてビジネスをスケールさせると反して自然環境への負荷・インパクトが大きいこと、また自然破壊と気候変動を間近に感じ、疑問になっていきました。
ビジネスが拡大することで、自然環境破壊になっては意味がないのではないか?
時代が移り変わり、モノが高くなり、そして資源や様々な大切なものや生命が失われようとしている。これではいけないと、80年代中盤にミッションステートメント「最高の商品を作り、環境に与える不必要な悪影響。最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし解決に向けて実行をする。」を掲げます。
更に、コアバリューとして、5本の柱をコード指針に掲げます。
Qualityクオリティー(品質)
Integrityインテグリティー(誠実さ)
Environmentalismエンバイロメンタリズム(環境負荷を減らす)
Justiceジャスティス(公平性)
Not Bound by Convention(既成概念にとらわれない)
「最高の商品とは?」
モノは0から1は生まれません。その1をできるだけ、環境へのインパクトを最小限に抑えるものにしたい。耐久性が高く、それを長く使い続けてもらうこと、そして使う素材にこだわる。これが最高の商品であると考え、それを追求し続けて世に送り出しています。
理念と哲学を持ちつつ、ビジネスをスケールさせる企業体制が素晴らしいパタゴニア。口では言っても行動に移せない人が多い中、パタゴニアはそれを先導しています。
信濃屋においても、その方針が運営の指針となっているとのことです。信濃屋も食品流通の立場で同様の取り組みをされています。(※信濃屋の記事はこちらを参照)

「常に未来を見て」
パタゴニアは、自分たちのビジネスがどう「環境負荷をかけているか」のリサーチをスタート。まずコットンの農薬や枯葉剤のことを知り、作り手が毒ガスマスクをして働いている現状を目の当たりにしたそうです。当時パタゴニアのコットン製品は全製品中およそ2割を超えていました。そして、1994年には1996年までにすべてのコットン製品をオーガニックコットンにすることを決定し、完全に切り替えた。製品化のサイクルが18ヶ月だったため、このスパンを設けたそうです。
アパレルはアウトドアの道具作りのひとつで、2018年に更に未来を見てミッションステートメントを変え、「わたしたちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む」を掲げ、
「HOWからWHY」を目指していきます。
「最小限に抑える」から更に進化し、「プラスを生み出し作り上げる」にミッションを切り替えて舵を切っています。
「1% for the planet」
85年からは環境のための草の根活動をする非営利団体へ寄付をスタート。今では資本の全てを寄付に回しているそうです。
「worn wear」
買ったものを長く使い続け、着物のように代々受け継ぐことを推奨。
「reduce →repair →reuse →recycle 」
さらに、reimagine(循環の世界をイメージしてください)リサイクルは水や環境負荷が大きいので最後にきているそうです。
通常、アパレル店員は、買ってもらうことだけに精を出します。しかしパタゴニア店員は「買って!」ではなく、「買わないで!」と言うそうです。「まだ使えるでしょ?2年前に買いましたよね」と。創業者のイボン・シュイナード氏も「live simple」をモットーに、昔のスバルの車を乗り続けていて、奥さんも初代のプリウスを乗り、新しい服を着ているのをみたことがないそうです。
自然は私たちがコントロールできるものでなく、私たちも自然の一部。アウトドアスポーツ、大自然の中に身に置いてこそわかる畏敬の念や恐さなどがあります。

信濃屋の商品部部長/食品統括バイヤーの岩崎さんは、「昨今元気のない日本だが、日本には和食、所作など素晴らしい日本の文化があります。箸は箸置きに横に置くのは結界、箸の向こう側は神の領域であり命をいただく感謝、自然を敬い寄り添う心があり、それを体現してきた。また、日本の食は、おいしさでも間違いなくNO.1だと思う。だからこそ、もっともっと日本の食の価値をあげていきたい。」と語ります。
自然と向き合い、そこでとれる食材をいただいて生き返る。人間らしさを失いつつある今、より自然の大切さを見直す時だと、お二人は言います。
「地球がわたしたちの唯一の株主」
パタゴニアが食や農に取り組むのは、資本主義の問題のほか、温室効果ガスの問題の1/4は食の問題から来ていて、生きるために食べることは欠かせない大きな比重を持つことだからです。本気で地球を守るには食にも取り組むべきとなったそうです。
土壌の健康、再生に取り組む。
動物福祉
社会的公平性(包括的視点)
2017年にリジェナラティブオーガニック認証&リジェナルティブオーガニック農法をつくりました。ジェネラティブ・オーガニック認証とは放牧を基盤とした動物福祉、農家と労働者に対する公平性、土壌の健康と土地の管理に対する厳しい要件を含む包括的な農業認証で、パタゴニア、ドクターブロナー、ロデール・インスティテュートを中心に複数の団体と協同で、食品と繊維の世界最高水準のオーガニック認証としてスタートしたものです。これを実践すると環境へのポテンシャルとインパクトは多大です。

「パタゴニアの食品たち」
通常麦は一年草だが、不耕起でつくる麦は、1年で終わらず、翌年も育ち、水の使用量も少ない上、炭素を土に閉じ込められます。その麦で作るビールやパスタなどを展開しています。日本でリジェナラティブオーガニックを広め、それで作る大豆、伝統木樽製法の味噌、日本酒などに取り組んでいるそうです。地球のことを考え、生産者や作り手の想いとストーリーのあるものを生み出していく、そんな一歩一歩がやがて大きな変化を生み出すに違いありません。

トークのサブタイトルの、「知ればもっと美味しくなる、食べればもっと豊かになる」のとおり、パタゴニアと信濃屋との共感共鳴・繋がりから、明るい未来の光が見えたような素敵なトークでした。自然があっての地球上の生き物のひとつである人間。それをひとりひとりが考えて行動すればきっと明るい未来に繋がるはず!

トークのあとは、環境と日本の伝統を大切にした体に優しいランチコースをいただき、歓談と交流の和やかな時間となりました。近藤さんと岩崎さんも各テーブルにパタゴニアのこだわり日本酒を持って回り、交流されていました。

食の探求セミナーは様々なテーマ、生産者を招き毎月開催されているそうです。ただ食べるだけでなく、その背景をちょっとのぞいてみてほしい。何気なく並んでいる品物も各々物語を伝えたい。知ることでより "楽しくなる"、考えることでより "美味しくなる" そんな体験の場として生まれたCASK。
虎ノ門ヒルズ駅直結で、とても便利で明るく魅力的なお店なので是非覗いてみてください。
ぜひ信濃屋のWEBサイトにてチェックしてみてくださいね。
パタゴニア
CASK

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